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Adéu a Tàpies

最後の巨匠

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2012年2月6日

バルセロナが生んだ世界的芸術家、
アントニ・タピエス氏が他界。
作品制作中に亡くなったという噂です。
2月7日、8日に、大々的なお葬式ではなく
追悼したい!という多くの市民のために
彼の作品を集めた
タビエス財団(ミュージアム)が
無料公開されたので、
私たちも行ってきました。

外観の屋上にある、
ぐるぐるまきの針金の作品「雲と椅子?」は、
常にどこか空とつながっているように
みえるのですが、
この日はいつにも増して
特別な空気が漂っていました。



21世紀になっても
優れたクリエイターは
世界中に多数存在するとはいえ、
タピエス氏は、ピカソ、ダリ、ミロと続く
20世紀最後の巨匠と現地で言われて久しいため、
「ああ、ひとつの歴史が終わったなあ....」と
感じた人たちも多数。

現在スペインを代表する美術作家の
ミケル・バルセロも

「タビエスが亡くなって、
自分にとってのマエストロは誰もいなくなった」


とコメントしています。


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晩年のタピエス。英国のGuardian紙より。
マドリードのレイナソフィア美術館での
個展開催時の写真です。

面識はないものの、
ムンタダスさんとか友人の建築家...とか、
知り合いのカタラン人の多くにそっくりなせいか
個人的に身近な雰囲気。

長年ご近所で、
同じ空の下の空気を吸っていたこともあって、
雲の上の存在ながら、
なんだか、親戚が亡くなったような気持ちになり、
歩いて追悼のための記帳にいってきました。

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タピエス財団の建物は、
ドメネク・イ・ムンタネーの初期の作品。
19世紀末に建てられた元新聞社や工場だった建物を
1990年タピエス財団が買い取り、
ロフト風にリノベーションした斬新な空間。

タピエスは建築にも敏感で、
自宅兼アトリエは、アントニ·コデルクが
設計しています。

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無料公開2日めでしたが、
記帳にくる人たちが後をたちません。

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2階では、イヤホンをつけて、
生前のインタビュー動画を
食い入るように見つめる人たちが。


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タピエス財団のなかには、
膨大な東洋に関する蔵書や、
新しい書籍や美術誌が集まった図書館があり、
予約制で無料公開されています。

日本の建築や美術の本も多数。
ガラス越しに、蔵や京都の壺庭の本を発見。

そういえば、昨年、タピエス氏は、
震災後、日本の復興支援のために
王立美術協会でチャリティー展覧会を開催され
ご自身の作品も販売されていたはず。

非常に親日派としても有名でした。

若いころは反骨精神も旺盛で、
匂い付き靴下彫刻をつくろうとしたり、
物議をかもしだすことも多かった芸術家ですが、
なんとなく育ちがいいというか、
どこまでも上品でエレガント。

個人的には、
ジャズクラブのフライヤーに、
長年に渡って描いていた、
あまり知られてないイラストシリーズが
とても好きです。
ジャズも大好きだったようですね。

生前から巨匠として認められ、
個人美術館もできて、
さらに、生涯現役・・・というのは、
非常に恵まれているけれど、
いくら長生きしても足りないぐらい、
色々やりたいことが残っていたのでは??

これからも、タピエス財団には時々作品を見たり、
図書館で蔵書をゆっくり閲覧しに通いたいです。


R.I.P


下は、2年前、タピエス財団が
リニューアルオープンしたときに、
テラスに設置された靴下彫刻。


某デジタルコンテンツに記事を書いたので、オマケに添付します。




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2010.05.12
巨匠の館、リニューアルで再び物議を醸す!?


ガウデイの有名な集合住宅のひとつ「カサバトリョ」付近の角を曲るとすぐ見えてくる、
このビルとビルの隙間を覆うぐるぐる巻きの巨大な針金は? 




答えは、存命するバルセロナの現代美術作家のなかで、
最も巨匠と噂されるアントニ・タピエス(1923~)の作品。

沸き立つ雲のような針金の渦巻きの上部に一筆書きの椅子のようなパーツが見える。
ここは、建物全体がタピエスによる個人美術館と図書館で、
もともとの建物は、ドメネク・イ・ムンタネーという、
ガウディのライバルともいえる建築家の19世紀末の作品で街の重要文化財。
ムンタネーは他に世界遺産に認定された
「カタルーニャ音楽堂」などを手がけている。 


出版社や工場として使われていた同建物を
タピエス財団が買い取り、
1990年、個人美術館を創設。タピエスの作品や、彼の蔵書(東洋美術関連も豊富)を
もとにしたライブラリーの他、
新しい作家の企画展なども精力的に開催してきたが、
2007年から改装工事で休館。
その後、2010年3月にリニューアル・オープンし、
新たな注目を集めている。


シュールリアリスムから抽象表現に入り、
アルテ・ポーヴェラや、ミックスメディアの創始者として、
現代美術史の中で重要な位置を占めるタピエス。

しかし、彼は昔から「物議をかもしだす」ことも大好きで、92年には「匂い付き靴下の彫刻」を、
国立のカタルーニャ美術館に設置しようとして、
市民や識者の猛反対にあう。
その結果、靴下彫刻はあきらめたのか?と思いきや、
今回のリニューアルにあわせて、新作の「靴下」という作品をテラスに設置。
抽象絵画作品で、よく自分のサインがわりに十字架を描き込む彼らしく、
ここでも十字架と破れた靴下が合体している。(ちなみに匂いはなし) 



80代後半を迎え、晩年といわれる年代になったタピエスが、頑丈で後々まで残るマテリアルで靴下彫刻をつくるか
と思えば、仮設のインスターレションのような
特製巨大な布ソックスとケーブルなどで
軽い作品をつくったことで、
かえって目にみえない凄みが増し、
住宅地の裏窓の景色とあいまって、
現代のキリストの受難を表しているようにさえ見えてくる。 


リニューアル・オープンの日に、
この中庭に姿を表したタピエス。
まわりの集合住宅からいろんな年代の主婦が覗いたり、
写真を撮っている姿が地元テレビのニュースで流れていた。


この作品へは、半地下にある直通エレベーターにのって
アクセス出来るようになっている。 




by nas-asa | 2012-02-25 21:21 | 芸術

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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