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カタルーニャ州総選挙


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2012年11月25日。
史上初めて、カタルーニャの独立が争点となる選挙が実施されました。

その結果、現政権のCIUが、62から50と12も議席を減らしたため、
いろんな解釈ができると思いますが、独立支持を唱える政党の議席が135議席中
87席以上という結果になりました。

つまり、CIUのマスさんたちが予想した以上に、
いつのまにかカタルーニャ全体で独立を求める人たちが多くなり、
その人たちの背景や階層、政治理念、価値観も多彩だったのでは?
という気がします。

上は、VICの広場に無数のキャンドルによって灯された
独立推進旗のデザイン。

VICはNaspleの出身地で、バルセロナからフランス国境に向かった
山間の古都です。ここまで来ると、ピレネーがきれいにみえる。





私たちも、9.11の例の150万人のバルセロナでの集会に参加してみましたが、
みんながCIUのサポーターじゃないことは一目瞭然でした。

でも、「スペインと一緒の現状では出口がない!」

と感じている点が共通していたような。

それから2ヶ月が経過。本当にいろんなことがあったなあ・・・。

水面下の戦いとか、実際にマドリードの現政権や保守層による
ネガティブキャンペーンも多彩でした。


一言でいうと、どうやったら考えられるのか?
というださいレベルの中傷もあり、
かえってスペインが嫌いになってしまう人も増えた気がします。

もっと彼らサイドのブレーンが優秀なら、他のタイプのPRや心理戦も
導入できるかと思うんですが。
スペインと一緒でいいじゃない?と再考させるように。


まあ、カタルーニャの人たちの気持ちをわかりたいどころか、
精神構造、背景を理解する能力に欠けている人が大半なような。

人間、逆の立場にたつってなかなか難しいし、
もちろん、当事者しかわからないことも多々あるでしょう。



あと、この独立機運問題を日本や別の国の文脈にあてはめるのも、
やっぱり無理がある。

日本では、
「経済的にも豊かな名古屋あたりが分離するかんじ?」
とかなんとか言う人もなきにしもあらずですが、それは全く違うので。


今回、世界各国の大手メディアの取材もなかなか好意的でした。



マドリード発の新聞が、過去30年以上に渡って報道してこなかった
カタルーニャのいろんな面も紹介していたし、
オランダのテレビは、自分たちが17世紀に80年も戦って
やっとスペインから独立しているだけあり、
今回もスペイン軍部のえらい軍人さんたちに取材してました。
「もし、カタルーニャが独立宣言したら、すぐに武力行使だろ」
と答えてた年配の軍人さん(階級は上のほう)が数名・・・。



現政権の文部大臣の国会での
「カタルーニャの子供たちをもっとスペイン化させねば・・・」
発言も強烈でした。

スペイン語は、もちろん皆ネイティブレベルでできるんですよ。

だから、「じゃ、スペイン化って何?」というのも、
みんなの話題に。


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こんなイラストを描く人も。カタラン人をスペイン化させる機械。
まあ、これならどっちもかわいいですが。


選挙のキャンペーン期間中、
街中には2週間、候補者(政党リーター)のポスター(旗タイプも多い)が。


でも、街頭演説、宣伝カーがないので、とっても静かでした。
(もちろん、テレビやラジオ、新聞はすごいホット)
じわじわくる熱さというか。


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こちらが、現カタルーニャ首相で、CIUの党首、アルトゥール・マスさん。
両手をあげたデザインが、なんというか十戒のモーゼ風。
独立への道を開く・・・というかんじでしょうか。
(おそらく本人も、ちょっぴり恥ずかしかったかも)


今回躍進したのが、ERC(日本では左翼共和党と訳されてますが、もっとリベラル。
中道左派共和党というかんじかな)のウリオル・ジョンケラスさん。


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まだ43才。大仏みたいですが、ここへ来て支持者が急増しています。
これからのキーパーソンですね。


イタリア人学校出身でローマへの留学経験があり、
中世カタルーニャの経済についての論文で博士号を取得。
日本の歴史、明治時代以降の近代化を研究し、大学で東洋史を教えています。
教え子の多くが日本に留学したり、今も東京で働いている人が10人以上とか。

ERCは、カタルーニャにとって歴史的にも重要な政党だし、
確実に独立を求める「国民投票」を実施する近道は??と考えた末、
ウリオルに投票する人たちも多かったです。

独立派のタイプとしても、ウリオルはまさに新世代の新感覚系。

郊外の小さな街の市長もしていて、市民に絶大な人気。

カリスマ性のある政治家って、やはりルックスも左右すると思うのですが、
彼の場合は静かで説得力のある話し方と、知的な人柄が大きいとか。
アイ・ウェイウェイとトム・ヨーク(Radioheadの)を足して2で割ったような?
不思議な外見だけれど、暖かそうな人柄はテレビからも伝わってきます。




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こちらは、最近残念ながら迷走しているようにみえる
ソシアリスタ(PSC)のポスター。

黒地で、1つの旗には「独立反対!」
もう1つには「中央集権反対。スペイン連邦をつくろう!」

というスローガン。

でも、連邦制で自治を認めるような社会をといっても、中央政府が認めなければ
永久に無理なわけだし、今までマラガル元カタルーニャ州首相が好きで
ソシアリスタだった人たちが、今回は別の政党に流れているような気がします。

そして、一番がっかりしたのが、ソシアリスタを代表する
ゴンサレス元首相(スペインで初の中道左派の首相)などの発言。

「カタルーニャが分離、独立?? 言語道断だ!!」の一点張り。
立場上、認められない気持ちはわかるけど、
もう少し他のいい方ができないもんでしょうか。



マラガルさんの奥さんも白紙あるいはみどりの党に投票するといってたから、
とりあえず、バルセロナでソシアリスタの時代は、
ひとつの終焉を迎えた気がします。


どこでも、諸行無常。

地殻変動が激しくなってきた欧州ですが、やはり時代の空気は移り変わります。


個人的には、
こてこてのカタラン主義の人たちだけではなく、国際派でリベラル(世界各地で
働いたり、勉強した人たち、MITやコロンビア大学、LSEで教鞭をとる人たち)
なグループが、何故ソシアリスタから離れたか?
その空気の変化・・・が、特に興味深いです。


そして、庶民の味方、ハードコア?独立派がCUP
PR動画のナレーションもラップっぽい。





超ストリート系といわれてるけれど、バルセロナだけでなく、
VICやGironaなどの若者たちと提携し、
郊外でもかなりの盛り上がりをみせてます。

今回初めて議席を獲得。草の根活動家から議員に変身。


上のVICを筆頭に、すでに独立を宣言した市町村も多いです。


こちらの昔の諺で

「カタラン人は山でつくられる」

というのがあるそうなのですが、内陸の古都の空気は、
バルセロナとはまた微妙に異なっています。


でも、今回いろんな人たちの動きを見て来て、独立まではまだ遠い道のりとしても
とりあえず、国民投票を実施して意思表示をする権利は与えてあげてほしいかな。




義理の両親や親族の多くも、独裁政権時代に育ち、いちいち説明したくないほど
いろんな悲しみを味わっています。

市民戦争の戦闘に参加した人は、もうほとんど存命じゃないけれど、
いまだにフランコ政権がつくった教科書を保管して怒りを燃やし続けている伯父さんや、
バルセロナでは、店のディスプレーに市民戦争の銃撃戦の写真を貼って、
この道でこんなことが起こった!と主張しているご近所の金物屋さんもいます。

その反面、気候風土を含め、魅力的で暮らしやすいバルセロナには、
スペインの他の州や南米、あるいは世界中から来て暮らしている人たちも多数。


もうEU国籍になってるし、世の中が狭くなってる時代に新たな国境はいらない
という声もありますが、カタルーニャらしさを反映させ、
コンパクトで小回りのきく、国際的な国をつくりたい、
という前向きな気持ちは応援したいです。

そのかわり、(もしその方向でいく場合)責任を持って、120%本気を出して、
過去の哀しい歴史の呪縛から逃れ(起こったことはきえないけれど)
何かとスペイン側のせいにするのもやめて、がんばってもらいたいです。




とはいえ、ここまで皆がハッキリと自分の立場や意志を明確に
表明できるようになっただけでも、すごい変化。
半年前までは考えられない!!との声多数。



前は、カタラン人でもフランコ派だったブルジョワ階級出身の一部とか、
スペインの他の地方から親がきているかどうかとか、
いろいろ微妙〜〜な問題があり、
職場や夕食の席でも、口にするのは本当に親しい人同士以外は、
避けたほうが無難というテーマだったので。


そして、スペインの現政権PPがやった、どうやったら思いつく?
と感心するほど、ださかったネガティブキャンペーンは、
やっぱり記憶にとどめておきたい。


下は、スペインの右寄り新聞ABCのある日の一面。

タブロイドじゃないのに、スペインの有名人アルバ公爵夫人の写真を掲載。


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「カタルーニャで今おこってることって、
(スペインへの)愛国精神に欠けてるんじゃないこと?」

みたいなコメント。


アルバ公爵は、ものすごい欧州の貴族の称号をたくさんもっていて、
エリザベス女王も頭をさげなくちゃい?という噂もあるそうですが、
カタルーニャの人たちにとっては、もうゴシップ&冗談のネタみたいなおばあさん。

あ、彼女の祖先がオランダ軍と戦った人たちですね。

もしABCが、笑いをとるのではなく、
彼女のコメントに効果があるのでは?とまじめに考えたとすれば、
的外れもいいところです。

良い悪い、優劣じゃなく、ほんと価値観、センス、精神構造、
視点も正反対かというぐらい違うので、かみあわず、説明しても難しいですよね。


かたや、今年のカガネー(クリスマスのキリスト生誕場面に飾る
縁起物の人形で、ウ*コしてるやつ)の新作は、こちら。


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独立支援活動家たちがモチーフになってます。

有名人バージョンもたくさんあり、カガネーのモデルになるのは
ある意味、名誉らしい!?

(どんな人のバージョンも等しく脱力しますが)


カタルーニャは、ゆるくて楽しい人達もたくさんいるので、
なんとか、今後「知的に」自分たちの未来を切り開いてほしいです。


そういえば、オボッちゃま(もとフランコ派なプルジョワ階級の人たちが中心)
がリーダーの政党シウダダンズと、
上記のストリート派CUPのリーダーのルックスのギャップもかなり興味深かった。

そこは、他の国同様、カタラン人も色んな人がいるなあと再認識。


これからも、なかなか目が離せない状況が続きます。


あと、日本では、
バルサファンなどは、カタルーニャについて興味を持ち、
平均より多めに色々なことを知っている人たちも多いけれど、
まだまだ一般的には情報が乏しいので(グルメ、買物、クラブ情報じゃなくて)
もっと色んな角度から、興味を持ってくださる人が増えれば嬉しいです。
by nas-asa | 2012-11-27 21:07 | カタルーニヤ

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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