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ビクトル・エリセーアッバス・キアロスタミ展覧会


2/13(日)は、CCCBの「エリセ、キアロスタミ監督」展覧会
Erice Kiarostami Correspondences
に行ってきました。日曜日でさらに祭日と重なったため、なぜか無料。
普通は4.4ユーロです。
このCCCBがあるエリアは、10年位前は、かなり荒れた下町でしたが、
現代美術館MACBA、公立デザイン協会FAD、
そして、この現代美術センターCCCBができて、ずいぶん明るく
変化しました。すぐ隣では、バルセロナ大学の歴史学部キャンパスが建設中。

CCCBの拡張コンペでは、尊敬するエリアス・トレスさんたちの事務所が当選し、
今後一部のファサードを改装する予定です。
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行く前に、この展覧会は、きっと両有名監督の交換した手紙を展示して、
あとは今までの短編作品とかスケッチ、それから、両監督のインタビュー画像が
少々あるのかと予想していたら.........



もっとずっとスゴイことになっていました。

今までに両監督の作品、それから小津安二郎とか、
成瀬巳喜男などの昔の日本映画を見た事がない方には今ひとつピンと
こないかもしれませんが、
もしチョットでも見てから、この展覧会場に足を運べば、
とてつもなく深く、幸せな時をすごせると思います。

両監督が交換したのは、ただの手紙ではなくて、お互いの作品に敬意を表したり、
自分の好きなもの、大切な場所を録画したビデオレター。
どれも、まさに短編映画作品です。
10年に一度ぐらいしか作品をつくらないエリセ監督が、
自分のふるさと、バスクのサン・セバスティアンを舞台に撮影した、
35分間の新作映像も、会場内で入れ替え制で上映されています。

最初のエリセ監督がキアロスタミ監督へと宛てた手紙(つまり映像)は、
「マルメロの陽光」の舞台になった、アントニオ・ロペスという
マドッリードの著名画家の中庭と、マルメロの木のその後の様子から始まります。
それからどういう展開になるかは見てのお楽しみですが、
私の場合、不覚にもスペイン語のナレーション(エリセ監督本人)と映像で、
生まれて初めて(たぶん)涙がこぼれてしまいました。
うまく説明できないけれど、美しいというだけじゃなく、無意識のうちに
「こういうものがずっと見たかったんだ!」という映像が眼前にあらわれて、
驚いた感覚に近いです。いっしょに行ったNaspleも
「なんだか夢をみてるみたいだ」
と言っていました。
大げさに聞こえて残念ですが、詩的で静謐(せいひつ)な世界って、
こういうものなのかなと思いました。

これからCCCBでは、この展覧会場を利用して、
子供たち(8才から13才)に、本物の映画を楽しむためのワーショップ
(観賞する目を養うだけでなく、カメラワークについて)を
毎日曜日に開催するらしいです。

膨大な量の画像、映像が溢れる現代。
いくら見たくないものは見ないようにしていても、
一度見てしまったものを記憶から消すのは本当に難しく、画像、映像の記憶ほど、
私たちの深層心理に影響を与えるものも少ないそうです。
でも、逆に本当にいい映像や写真作品に出会えれれば、
私たちに目からウロコの体験をさせてくれます。
この展覧会に行ったあと、もっと映画についてまじめに勉強したり
(深層心理と映像や、きちんとした映画批評)、
ちょっとした日常を自分なりに録画してみたり、
だれか大事な人に手紙が書きたくなりました。

5月21日まで開催中なので、欧州はもちろん、北京、NY、アリゾナ、
東京の友人にも薦めたくなる展覧会です。国境を超えても、
見に来る価値ありかも。

下の写真は、キアロスタミ監督が撮った写真の一部。
イランの風景いろいろ。雪景色の写真と「道」がすごかった。
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これからの人生、何をちゃんと自分の目で見て生きて行くべきか? などなど、
つい普段考えないようなことを考えてしまったせいか、
会場を出てカタログ等を買ったら、どっと疲れてしまいました。
(軟弱。でも、すごく嬉しい疲れです。)


で、とりあえず甘いものが吸収したくなり、旧市街のこちらの甘味どころへ。
チョコラテ・コン・チューロスを摂取。チューロスは揚げドーナッツみたいなものです。
このチョコレートは、よくあるホットチョコを2倍ぐらい薄くしたものなので、
見た目ほど甘くはありません。
当地の料理には、砂糖をいれるものが皆無なせいか、
その分すごく甘党な人が多いです。
日曜日の午後は、この老舗チョコラテリアも大盛況でした。
90才ぐらいのおじいちゃんと、80は超えてるかなというおばあちゃんが
切り盛りしてる店です。

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by nas-asa | 2006-02-14 23:58 | 映画・音楽

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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