人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Rafael Moneo


やっと!

Rafael Moneo_a0059032_1740385.jpg



現代建築家8人の設計戦略と理論の探求
ラファエル・モネオ著
A5変形判/420頁
定価:3,500円

長いことかかって、まるごと1冊翻訳した本
(正確にはa+uの別冊)が発行されました。

スペインを代表するというより、現在世界でも有数の大御所建築家、
ラファエル・モネオの、ハーバード大学(マスター)での
講義録を中心にまとめられた本です。

詳細


ご協力いただいたa+uの編集者で、現在パリ在住の北澤愛さんに
たいへんお世話になりました。「ありがとうございました!」




モネオ氏は、世界の建築賞(プリツカー、RIBAゴールドメダル等)
を総なめ。マドリードのアトーチャ駅、ストックホルム美術館、
最近ではプラド美術館の増築も話題になっています。
バルセロナでは、彼が設計した「L'illa」
というショッピング・モールにお世話になっている
方が多いかも。

同書は、彼と同時代の8人の建築家(先輩やライバル、および後輩)
を題材にして行ったユニークな講義録。

当然、ハーバードでは英語で講義を行っていますが、
それにプラス、後年マドリードで行った特別講義も含め
スペイン語で執筆されています。
そのオリジナル本は、actar社のスペイン語版で、
それをもとにMIT出版から英語版が出ています。


Rafael Moneo_a0059032_18232774.jpg



スペイン語版も英語版も、紙質と習慣(読者のニーズ)の違いか、
ずっしりと厚くて重いんですが、日本語版は軽くて丈夫そう。
装丁は、日本語版のほうが個人的には好きです。


モネオ氏が実際に講義している雰囲気を出すように、
なるべくわかりやすい日本語に訳そうと心がけましたが、
モネオ氏のスペイン語はどうしてもペダンチック(つまり学者っぽい)
でまわりくどいところも多々あり、さすがにオヤジギャクはないものの
「このカ所冗談です。念のため」と、思わず付け加えたくなるところや、
言葉がちょっとたりなくてインタビューだったら、
「といいますと?」と、その心をききたくなる部分も
正直ありました。
でも、図版も多数掲載されているので、そのへんは
カバーされていればといいなあと思います。

とにかく、欧州の教養豊かな建築家による、
現代建築史への新しいアプローチをうながす
意欲的な(希有な)本ですので、
これから建築家を目指す若い方たちに
ぜひ読んでいただきたいです。

歴史に残る建築家の仕事とは?必要な素養とは?
その人生とは?
など、色々考えさせれる内容です。




★以下、余談です。

日本語版には、新たに書き下ろしの序文が追加され、
最後に「ソン・ペンティナドにて、ラファエル・モネオ」
で締めくくられています。
で、このソン・ペンティナドがどこか知っている人は、
かなりのモネオ通です。

私はこのソン・ペンティナドがどこか調べるだけでも
時間がかかってしまい、
結局、編集部からご本人にきいてもらったところ、
マヨルカ島の彼の「別荘の屋号」でした。

ソンという冠詞から、
マヨルカかそのへんの島というのはわかったし、
もしかして別荘の名前?とは思いましたが、
それならそうと、はじめからそういってほしかったです(笑)
それに、日本向けなら「マヨルカにて」だけでいいのになあ、
と正直思いましたが、どうでしょうか?

本には何もこの場所の説明は入っていないので、
ちょっとオマケ情報(愚痴?)でした。
by nas-asa | 2008-06-20 19:12 | 翻訳

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


by nas-asa