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伊東豊雄講演会@La Salle 大学


4/7(金)に、伊東豊雄さんのレクチャーに行きました。
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写真は、一枚目の満開の桜の画像を背に、レクチャーをスタートさせる伊東さん。
(観葉植物の葉っぱが邪魔で、スミマセン)

ダリプレツアーから戻ったばかりで、まだバルセロナを取材するチームの仕事が残っていて、講演会に行くのを今回はあきらめようと思ってたら、朝8時半ごろ当地の伊東事務所に勤務する小針修一氏から電話。伊東さんがバルセロナの建築学会で講演された92年頃の思い出から、最近のことまで一気にフィードバックされ、やっぱり行くことにしました。




La Salleというのは、フランスの修道会の1つで、日本ではラサールと言われますね。
こちらでは、とてもおぼっちゃま、お嬢様系の学校として有名で、場所もボナノバと呼ばれる、山の手の閑静な住宅地にあります。
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この日は、同大学の卒業式もかねていて、カタルーニヤ州政府の副大統領や、多数報道陣が詰めかけていました。伊東さんのレクチャーの前に、卒業式のセレモニーが行われ、専攻コースごとに、エンジニアまたは、建築士の資格になる卒業証書が各生徒に授与されました。おぼっちゃま学校といっても、みんな普段と同じカジュアルな服の人が多かったです。白いスーツの女の子とかが浮いてたくらい。でも、女性もかなり多いです。
卒業にあたり、先生のスピーチがあり、「この学位を取得するのは、とても大変だったのはよ〜く知っているが、決して奢らず、卒業後も一生、人の話をちゃんと聞いて、謙虚に勉強し続けてほしい。」とのこと。そのあと、カタルーニヤ州副大統領(ちなみにこちらは自治が認められてるので)が、「どんなに才能があり、自分のデザイン能力を試したいとしても、また、クライアントがどんな要求をしてきても、その作品は、私たちみんなの国土の風景となることを忘れずに。景観を守り、素晴らしい作品を作ってください!」と話したのが印象的でした。
自伝映画の中で、ル・コルビュジエも、「パリに出て来たとき、ある人にきっと君は大成するだろうと言われた。でも、それは、スケッチがうまいからとか、デザイン能力がありそうだからというんじゃなく、人の話をちゃんと聞くからだ...」と独白してるのですが、ほんとに謙虚に、人の話をちゃんと聞けるかどうかって大事ですね。

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で、伊東さんのレクチャーは、画像もちゃんとしていて、(ムービーの1つがうまく作動しなくてハラハラしたのを除いて)日本語できいている私たちにとっては、非常にわかりやすかったです。しかし、逐次通訳は、やっぱり聴衆が建築の大学関係者ということを考えると、あ、そこが肝心なんだけど...というところが、うまく伝わりにくく、ちょっと歯がゆかったかも。私がやれと言われたら、滅相もないと思うぐらい、ものすごく難しいことはよくわかるし、通常、どうしても翻訳によって、本来の内容から1割ぐらいは欠けて伝達されると言われてますが、今回は3割ぐらい落ちた感じがしました。まあ、ビジュアルでかなり補えるのですが。異文化交流は大変ですね。でも、聴衆は大きな拍手を送ってました。
デザイン学校らしく、一番前の列のはじっこにいた二人の学生は、伊東さんや、壇上の人たちの似顔絵、スライドの中の伊東さんの作品や、資料の画像などを素早くスケッチしてました。けっこう上手。

伊東さんのフェリア(見本市会場)のプロジェクトは、4/6日に起工式をむかえ、この日もほとんどの新聞の一面に大きく記事が掲載されました。El Paisの関連記事の見出しが、「Zen y Arte(禅と芸術)」と、あいかわらず東洋人だからと、安易に禅と結びつけていて脱力。日本では、スペインといえば、「情熱」が枕詞の定番ですが、そういう安直な展開だと新しい発見はできないなあ、といつも思います。

伊東さんレベルになると、世界中の大きなプロジェクトが自然と入って来ると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この15年間、当地だけでも、レクチャーを何度かされたり、展覧会を開催したり、地元の人と交流したり、そのあとさらにコンペで当選して...という、ほんとに信じられないぐらい長いプロセスを経て、今の大きなプロジェクトが着工しています。非常に根気のいる世界です。
by nas-asa | 2006-04-15 02:55 | 建築・デザイン

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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