アントニオ・タブッキ@バルセロナ市役所のサロン


嬉しかった!
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4/22(土)夜、バルセロナ市役所では、サンジョルディの前夜祭のような特別イベントがありました。
毎年、市役所、バルセロナ図書館、大手出版社がコラボレーションし、国の内外の有名作家の公開対談が開催されます。今年は、私たちの大好きなイタリア人作家アントニオ・タブッキさんがみえるということで、旧市街のサンジャウマ広場まで足を運びました。市役所は、中世の宮殿を再利用したものなので、外から見るより内部のほうが荘厳な雰囲気です。サロンはもと礼拝堂だったのでは?という、これまた立派な空間。




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最初に、市長のクロス氏のスピーチがあり、この人は、かなりの頻度で言い間違いをする事で有名なんですが、今回は、タブッキじゃなくて、タブッチと連発。(笑)
会場には、耳が不自由な人たちのために、字幕(すぐにキーボードに打ち込んでる)と、手話通訳の人が待機しているのが、お役所のイベントっぽい雰囲気。でも、音が聞こえない人にとっての読書の楽しみは、さぞかし重要なのではないかと思います。

タブッキさんのスペイン語の翻訳者の女性と、タブッキさんの対談はとても素晴らしいものでした。ポルトガル文学やペソアの研究者としても有名な彼ですが、スペイン語もかなり堪能。

報道陣はもちろん、市長や政治家、関連出版社の人たちも大勢だったので、念のため持って行った彼の著書にサインしてもらうという案はムリかもと思いました。が、終了後なんとなく勢いで、タブッキさんにジリジリ近づいて、日本語の本(須賀敦子訳:島とクジラと女をめぐる断片)をNaspleが手渡してしまいました。タブッキ氏も「え?日本語?!」と意表をつかれたのか、驚いてサインする体勢に。まだ、報道陣が写真をとってる最中だったので、私の本も、大勢のカメラマンが「激写」してました。(笑)他の作家ならここまでしなかっただろうけれど、この人は特別な存在なので背に腹は代えられなかったです。
で、Naspleは、16年前に、こちらの昔務めていた会社の社長の息子さんがデザイナー/画家兼、映画監督で、タブッキさんの小説を映画化したいということで、その版権のことなどを交渉しにイタリアの彼の家に、その監督と当時のその人の彼女(今は、3大テノールのJ.カレーラスの事務所勤務)と一緒に行ったことがあり、幸運なことに3日続けてお目にかかったそうです。でも、なんといっても、そんなの16年前の話だし、その後、監督とタブッキさんのエージェントとの交渉は難航し(監督のほうにかなり問題があり....)Naspleも会社をやめてそのプロジェクトからは遠ざかっていました。彼の他の作品は、いろんな国で映画化され、リスボンを舞台にした「供述によるとペレイラは」では、マルチェロ・マストロヤンニ主演で映画化されたりしています。というわけで、そんなこと忘れてるだろうと思って、「16年前にお宅にうかがったことあるんですけど」と、ふだんとは全く違うとても小さい声で本人にポツッと伝えると、タブッキさんは、今までスペイン語で話していたのに急にイタリア語になって、Naspleのファーストネームを言い、「もちろん覚えてるよ。元気だったの? あの時のフィレンツエ郊外での食事は楽しかったね〜〜!」と言ってくれました。私たちのあと大勢の人が後ろに並び始めたので、それ以上話せなかったけど、そのあと、よく行くピザ屋「ベロニカ」で食べたピザとビール等も格段に美味しかったです。

タブッキ氏も料理や食べ物が大好きで、小説でも重要な役割を果たしています。「供述によるとベレイラは」では、亡くなった奥さんの写真に話しかけ、惰性で生きていたペレイラが、いつも習慣的に飲んでいたレモネードの代わりに、カフェでワインを注文する瞬間について、作者が説明していました。とりたい食事や飲み物とその時の体調、スピリットの間には明確な繋がりがありますね。

タブッキ氏は、日本では随筆でも有名な須賀敦子さんが翻訳しているので、須賀さんを通して、タブッキを知っている人も多いかも。「コルシア書店の仲間たち」「ベネツィアの宿」など、日本人女性が書いた海外生活についての随筆で、これ以上優れたものって、私はまだ出会っていません。日本語も読みやすく、シンプルなのに格調があります。

タブッキ氏曰く、「書物は、ポケットに入る誰かの記憶。誰かに守ってもらったり、誰かの声を聞き、一緒にいてもらうのが好きなので、僕は本を読むのが好きだ」
「読書は、いろんな人たちの記憶を旅すること。本になったり、誰かに記憶されれば、その著者や、そこに出て来る人たちは永遠に生き残ると思う」
タブッキさんは、ポルトガル文学の専門家としても有名なんですが、無神論者なのでキリスト教的「魂」だとか、「来世」などは信じず、著作と人々の記憶だけを信じるそうです。

新聞のインタビューで、ベルルスコーニ氏がなかなか退陣しようとしなかったのことに対し、「特権(首相や大臣であるあいだは刑務所にいれられない)がなくなったら、いろいろ汚職が摘発されて、牢屋にいく可能性もあるからだろう…」また。スペインの政治については、
「スペインの国民は、2年前の総選挙の国民の行動を見ればわかるように、嘘をみぬく力があり、そして行動が素早い点で、民度が高い」とも。噂によると、タブッキ氏の息子さんの一人はバルセロナ在住なので、彼も頻繁に当地にみえてるようなんですが、イタリアは、なんだかんだいって、こういう作家がいるだけすごいなあ、私も一度、彼が教えているピサ大学や、お宅のあるヴェッキアーノに行ってみたいなと思いました。
下の写真のピンクのネクタイが、バルセロナ市長のクロスさん。本職は医師。
タブッキさん、須賀敦子さんについては、話が尽きそうにないのでまたゆっくり。

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by nas-asa | 2006-04-25 18:41 | カタルーニヤ | Trackback | Comments(0)

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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