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The Long Goodbye


ギムレットが飲みたくなる?
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当然ながら、海外にいると日本の書籍を購入するのは困難。
それでも、友人数人で定期的に手持ちの書籍を回し読みして、
なんとか必要最低限の日本語読書を堪能してます。

たまの東京への里帰りでは、夢にまで見た大型書店でゆっくりするのが
至福の時。アマゾンもいいけれど、実際に手に取って選べるのは最高です。

文庫でもたくさん買うと出費もばかにならないので、
しぶい古本屋も覗くようになりましたが、つい新刊で買ってしまうのが、
村上春樹シリーズ。
前回も重いなあと思いつつ、「ロング・グッドバイ」その他、購入しました。
「世界の終わりとワンダーランド」「中国行きのスローボート」のころからファンです。
彼に対する意見は色々あると思いますが、当地でもノーベル賞に一番近い
日本の作家として注目されてます。

バルセロナでも朗読会やってくれないかなあ。




チャンドラーの「ロング・グッドバイ」は、
村上氏が10代のころから大好きで、
何度も暗記するほど読んでる小説だそうで、
彼の訳文から、この小説を後世に残したい、という意欲が伝わってきます。
ハードボイルドが苦手という人にもお勧め。

大量の文字が消費されていく中で、意識して
吟味された日本語も読まないと、はやり言葉(あとで読むと死語ばかり)
に流されそうになります。

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「意味がなければスイングはない」

これは、村上ファンだけじゃなくて、音楽ファンにもお勧め。
スガシカオ以外のJ-Popがダメと書いてるので、
J-Popファンにものすごく反感をかったと思いますが、私は村上さんの意見に納得
してしまいました。
(何も日本のミュージシャン全部が悪いといってるわけじゃないし、
才能のある人もたくさんいるから、日本語がわかってもわからなくても、
音楽としてスゴいというものを発信してくれないかなと思います。
同じリングにいたら訴訟になるんじゃ?というぐらいメジャーな洋楽と
そっくりなメロディーや演奏ではまずいかも。)


ジャズはもちろん、クラッシックの演奏家についての意見もクリアーで参考になります。

音楽の中に楽々と入っていく才能がある舞踏家になれなくても、
せめて音楽への敏感な感受性は持っていたい、と思わせる本でした。


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「東京奇譚集」
品川猿の章が好きです。昭和の優れた短編文学を継承しているような
シリーズ。
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村上版ロング・グッドバイと合わせて読みたい、「長いお別れ」清水 俊二 訳。

下は、当地でスペイン語版とカタルーニャ語版が出ている「海辺のカフカ」の表紙。
今迄は、村上作品といってもこちらでエキゾチックなものとして販促するために、
ノルウエーの森が「東京ブルース」(笑)だったり、
妙な芸者のようなデザインだったのが、だいぶ進歩してます。

どちらかというと、白地に黒猫のカタルーニャ語バージョンのほうが好み。
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昨年、このカタルーニャ語バージョンが発行されたとき、
カタラン専門書店で翻訳者のレクチャーがあり、どんな人がくるのか
見に行ってきました。
でも当日来ていたのは、翻訳者(30代初め)が教えている大学の
翻訳コースの若者たちと、数人の大人というかんじで、
まるで彼の授業を受けてるようでした。
色々日本の背景を説明しながら、「いいですか?  わかりましたか?」
を連発していて可笑しかった。
彼は若いけれど、ポール・オースターなどを手がける実力派らしいです。
しかし、
「村上作品には、他の日本の純文学と違って洗練されたユーモアがあり、
(何故かいまだにこちらの毎日テレビでやってる20年前の)
風雲たけし城(しかも黄色いユーモアというタイトルで、
アフレコのスペイン語も勝手につけたひどいもの)とは全く違います!」
と強調。
それには、日本の他の文学にも洗練されたユーモアがあるのになあと
複雑でした。彼は日本語から直接訳した(英語も参考にしてると思うけれど)
と言ってたので、余計に腑に落ちなかったような。
翻訳者も本当は、村上さんには独特なユーモアがある、
といいたかったのだと思いますが。

そういえば、村上さん自身もスペインの全国紙のインタビューで、

「あんまり日本的じゃないですね?」
と、つきなみな(かつ知ったような)質問をする記者に対して、

「年がら年中歌舞伎にいって、豆腐を食べてるような世界を期待するなら、
別の小説家をあたってくれ(笑)」
と答えてたような。
村上作品、当地でもますます若い世代を中心に浸透しつつあります。



こちらは、だんだんバカンスから戻ってくる人が増えて、窓から聞こえてくる
車の音も殺気だってきました。


☆昨日(8/27)は、ロナウジーニョがスペイン国籍をとったそうで、
彼の自宅近所の市役所(ガバというバルセロナの南にあるエリア)から出て来る、
白いシャツ、黒いズボン、サングラスの彼の様子が何度もテレビに映っていました。
なんだか、だんだんスティービー・ワンダーとか、
ミュージシャン風に変化してる印象だったのは、服のせいでしょうか。(笑) 
中南米は二重国籍が可能なので、こういう裏技ができるようです。
by nas-asa | 2007-08-28 20:07 | 本/雑誌

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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