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IL Divo



毛穴が引き締まる?!

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2009年お正月情報つづき。
欧州で話題のイタリア映画を見に行きました。

「Giulio Andreotti IL Divo」
イル・ディーボといっても、あのイケメン歌手グループ
(歌は上手なのに、個人的には微妙に気持ちわるい・・・)
じゃなくて、

つい最近、90才の誕生日をむかえたイタリアの元首相
ジュリオ・アンドレオッティの伝記映画。
パオロ・ソレンティーノ監督。

08年のカンヌで審査員賞を受賞。グランプリの「ゴモーラ」と並んで
イタリア映画の復活を印象づけました。




上の写真は、同映画のちらしと映画館で舐めていた
イタリアのミント。19世紀から製造している伝統の味。
色んな種類があり、この日はシナモン味を選択。
(日本の浅田飴のニッキ味を小粒でマイルドにしたノリ)




日本では、今字幕を準備中でしょうか?



こちらで、イタリア語オリジナルバージョンを見に行ったところ、
観客は在住イタリア人が圧倒的でした。

すごくローマと、マフィアの南のほう(パレルモ)の言葉が
リアルに出てくるので、
イタリア語がちょっとできる人でも難しいとのこと。
私はもちろんわからないので、(スペイン語とカタラン語が
それぞれイタリア語とかなり似ているので
半分ぐらいわかるような気がするだけで)
スペイン語の字幕を読むのに時間がかかって、画面におくれがち。


それでも、手に汗握りました。(毛穴も引き締まる気分)
もう少し予備知識があれば、もっと楽しめるはずです。



20世紀の後半、数十年にわたってイタリアの権力を掌握した
アンドレオッティ元首相の生活がリアルに描かれます。
どんどん邪魔なジャーナリストや政敵が自殺したり、
マフィアに殺されたり。日本だとまだご存命という点で、
中*ねさんとか、バルセロナだと、元IOC会長で財界のドン、
サマランチ(ほんとはサマランクと発音)氏が近い存在?

まあ、このお二人は、(よくも悪くも)アンドレオッティ氏には
およばないような。



イタリア人といえば、やけに明るいと誤解しているア・ナ・タ!?
いやいや、暗いところもたくさんあります。
・・・というより深い。

実在の政治家(しかも黒幕)をネタにして、
これほどの映画を制作できるイタリアという国はすごいです。

今の首相Bはもっと単純にアホだったり、
現在の社会にもかなり問題があるせいか、
バルセロナにも若くて学歴も才能もありそうな人たちが
たくさん移住してきてます。(EUでビザの問題なし)



大好きなイタリア人作家のアントニオ・タブッキが

「イタリアは、牛のホルスタイン柄のように、
すばらしい部分とネガティブな部分が黒と白にハッキリとしている」
と、以前インタビューで語っていました。

ほんとに両極端なようです。


同映画は、BBCの、古代ローマ時代をテーマにした
大河ドラマ「この私。クラウディウス I, Claudius」(デレク・ジャコビ主演)
の世界や、ウンベルト・エーコの小説「薔薇の名前」
(映画はショーン・コネリー主演)などを彷彿。

ローマ時代の皇帝の権力争いだけじゃなく、中世の教会の異端尋問もすごい!!
この中でサバイバルできるほうが奇跡的。

上記名作ドラマで、最終的に皇帝になるクラウディウスも、
生まれながらに病弱、どもり、足をひきづらないと歩けない、
などと、一見、権力をとりにくそうなタイプ。

戦に強く、生まれながらにカリスマのオーラが漂うタイプではありません。


そういうところも、なんだかアンドレオッティの狡猾さと似ていて
小説と事実は違うとはいえ、興味深かったです。

しかし、首相公邸以外に、彼の私邸や家族も出てきて、
その暗さといったら・・・!!
あのうちでのホームスティは、かなりつらい。
中国共産党幹部の家とどちらがいいかな、
なんてくだらないことを考えました。


アンドレオッテイ氏の名言のなかには、

「さもしい善良さは、かえって危険である」

というのがあり、

「薔薇の名前」のなかで、主人公のイギリスから来た司祭の
「純粋になりすぎてはいけない。純粋すぎると視野が狭くなって
危険だ」という内容の言葉とリンクして印象的でした。


また教会で懺悔するアンドレオッティ氏の言葉。

「小さな罪はまったくおかしていません(たぶん大きな悪は別)」

最近のインタビューでは、

「イタリア政府の秘密をまだまだたくさん知っているけれど、
天国までもっていくつもり(つまり黙ったまま死ぬ)」


えっ!天国にいくつもりなんですね。
そのように確信しているところがまたすごいです。


同映画のなかで、首相当時の彼が、
日曜日の早朝、暗いなかを教会にいくシーンが出てきます。

警備(マシンガンをもった警察官が数名)の人たちの緊張感。
そこに流れるBGM(フォーレのPavane)が素晴らしい。
この音楽を聴くだびに思い出しそうです。

さわりは下記。





スペインの新聞によると、
ほんもののアンドレオッティ氏は、同映画を見て、
すご〜く怒ったらしいそうです。


日本でイタリアといえば、
須賀敦子さんが好きな人やデザイン関係者なんかは別として、
通常は、ローマ時代、ワイン、オペラ、ブランドもの。
あたりでしょうか??

つまり、同映画が日本でヒットするかどうかはわかりませんが、
イタリアの近年の背景を知りたい人、イタリア好きな人には
必見な映画です。

そうそう、あのファニー・アルダンも登場しますよ。
彼女はフランス人で、スペイン語、イタリア語が堪能って
本当だったんですね。イタリア人そのものでした。
by nas-asa | 2009-01-19 09:24 | 映画・音楽

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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