Still Walking



現代の東京物語

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日本より一年遅れになるかと思いますが、
6月からバルセロナの映画館で、是枝 裕和監督作品
「歩いても 歩いても」が、絶賛上映中・・・。

ということで、さっそくVerdi Park(映画館)で観てきました。




同作品は、有力な世界の映画祭で注目を集めたもの。

是枝監督は、今までの作品の大半が、
ふつうの映画館で頻繁に上映されていて、
バルセロナでもすでに人気が浸透している日本の映画監督です。

同監督の今までの作品では、
「幻の光」「ワンダフルワールド」「ディスタンス」は好き。

「誰もしらない」は、少しテーマが重かったです。
社会性があり、現実はもっと厳しいはずだし、
フランス映画にああいう重さのある作品が多く、
とても意欲作だとは思いますが。


で、また暗いのかなあ、と思いつつ
「歩いても・・・」を観にいった感想は、
是枝監督の作品のなかでうんぬんでなく、
最近の邦画(新作)のなかで、一番後々まで心に残るような
いい作品でした!

今回は、是枝監督自身のお母さんの思い出などを中心にした
家族の物語で、ある特定の家族の話なのに
結果として「世界でも通用する」普遍的な内容になっています。

こちらの批評家が、
「小津の東京物語の現代版」または、「東京物語の続編」
などと書いていますが、ほんとうにそうかもしれません。

カメラワーク、脚本、構図といったことだけじゃなく
小津作品によくある、亡くなった人、いなくなった人たちの不在が
強調され、残された人たちが皆で故人の思い出を共有する・・・
というところが、似ているように思いました。


小津安二郎に影響を受けた現代の監督は無限大で、
海外では、アッバス・キアロスタミ、 ヴィム・ヴェンダース、
ジム・ジャームッシュ、アキ・カウリスマキ、
古くは、フランソワ・トリュフォー、身近なところでは、
バルセロナ出身のホセルイス・ゲリンなど、たっくさんいます。

これまでも、東京物語調のものをつくろうとしたり、リメイクしようとして
打席にたって、ゴロか三振で終わった人も多かったような。
是枝監督の「歩いても歩いても」は、そういう意味で、
逆転ホームラン!かどうかはわかりませんが、
かなりの会心作なのでは? 


脚本もゴンチチの音楽も良かったし、
何より役者さんたちがすごい。

阿部寛、こちらでもファンが増えそうですよ。
(Naspleはもともとファン。ユーモラスな役も似合うので)


みなさんそれぞれ良かったけれど
(セリフによる、それぞれの秘密とキャラクターの出し方も)
特に樹木希林さんは鬼気迫ってた・・・
と、書くと早口言葉みたいですが、
ほんとにすばらしいっ・・・!
昼と夜で雰囲気が変わったり、ものすごい難しい役どころです。

日本人にしかわからない、モノマネも
なつかしかった!(林家三平なんて、若い人は知らないでしょうね)

原田芳雄さん扮する、引退したちょっと意固地な
内科医のお父さんも良かったし、
長女のYouが、お父さんに文句いわれた後、
部屋を出てから玄関で「小さいっ!」と愚痴るところ、
いろいろ可笑しいところもたくさんでした。


久々にDVDが欲しい新作邦画になりました。

心から良質な小説を読み終わった後のような、
何度も思い出したくなる映画です。


まあ、何かすごいことがおこるわけじゃないし、
身内や大事な人を失ったり、
人生いくらがんばっても間に合わないことばかり・・・
ということが、肌でわかる年頃にならないと、
ちょっと地味な映画に思えるかもしれません。

でも、まだ親がうざったいと思う年頃の若者にも、
とりあえず鑑賞しておいてもらいたい作品なような。
で、もしかして、小津の東京物語もまだ・・・
なんていう人の場合は、ぜひあわせて鑑賞してもらいたいです。


いまだに、日本の映画はバイオレンス中心、
またはサムライ芸者系と思ってる人が、
残念ながら、まだまだ海外では意外なほど多く、
あるいは、
「それは日本じゃありませんっ!」
と、叫びたくなるような
みょうちくりんなイメージで日本をとりあげたり、
日本で撮影する監督も後を絶たないなか、
ごくふつうの日本の家族の情景(日本人が見ても
違和感なし)を通じて、
欧州の人たちの心を動かす映画を世界に発信してもらえて
素直に嬉しいです!!



こちらのテレビの映画紹介コーナーでは、
食べ物を中心に家族が思い出を語ったり、
家族が一緒に料理したりするところが、
当地の価値観ともと共通している!
とナレーションが入っていました。

食を大事にしたり、
家庭料理が美味しい地方っていいですね、やっぱり。


「東京物語」と「歩いても歩いても」を見ただけで、
日本人や日本って、けっこう深いなあと思う人が多いはずなので、
異文化交流に映画ってあなどれない・・・。


そういう私は、映画館から帰った後、
you tubeで、樹木希林さんの昔の映像をチェック!

寺内貫太郎一家で、生ジュリーがほんとうに登場する回や、
リンゴ殺人事件で踊る映像、最近ではFUJIFILMのお正月シリーズの
「イナバウワー」などなど・・・芸達者!


日本も世界に誇れる俳優さん、監督さんがまだまだたくさんいるのは
すばらしい財産だと思います。
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Commented by granollers at 2009-06-14 19:28
ご無沙汰しています。
この映画、今こっちの映画館で見られるんですね!見たかったのです。
阿部寛、好きなんですよ。昔は、ただのイケメンって感じだったのに、
トリックあたりから、コミカルな役もこなすようになって、すごく良い俳優さん
になった気がします。そうか、“幻の光”も是枝監督なんですね。なんか、
“誰もしらない”のイメージが強くて……。
近いうちに、見に行ってみようと思います!
Commented by nas-asa at 2009-06-15 02:13
★granollersさま
この映画、カタラン人のお友達にもおすすめですよ。日本の映画って、過激か、
独特の間というのか、テンポが遅くてこちらの人が退屈しちゃうのもありますが、
これは引き込まれます(といってもある程度オトナの場合)。ゴンチチの音楽も
ほんわかしていて、胎教にもいいかも。
Commented by kabukimama at 2009-06-16 07:42
私も先週早速見に行きました。
万国共通のテーマですよね。家族って、amor y odioですからね。
役者さんもよかったけど、やはりこの監督さんはスゴイデス。
「誰も知らない」はしんどかったけど、映画はすばらしかったと思います。

BTVのビデオ、再来週、またお世話になると思います。私、2本撮りだったので。
Commented by ヨーロッパカラー at 2009-06-16 12:09 x
突然の投稿失礼致します。

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突然の投稿にも関わらず、最後までお読み頂き有難うございました。
Commented by nas-asa at 2009-06-16 15:44
★Kabukimamaさん
誰も知らない・・・は確かにインパクトもあったし、東京湾岸の風景もきれいでした。
歩いても・・・は、昨年せっかく東京にいったのに、
東京都心では日常生活が感じられなかった・・・という
変な意見をいってたこちらの映画関係者にみてもらいたいです。
たまたま見かけなかっただけなのに。思い込みってすごいですよね。

黒沢清監督の「東京ソナタ」は、また違うアプローチでしょうけど、
これも観てみたいです。
by nas-asa | 2009-06-14 17:14 | 映画・音楽 | Trackback | Comments(5)

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


by nas-asa