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Old Neighborhood

昔のご近所再訪。

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10年前住んでいたのは、
大英博物館から大英図書館のほうに向かった、
Bloomsburyと呼ばれるエリア。


同エリアの中心、Russell Sq.駅の近所に
70年代のコンクリートでできた
どこか憂鬱で、買物するだけで気分が暗くなってしまう
ださ〜いショッピングセンターがあったのですが、
つい数年前、「ナイス&クリーンに生まれ変わった!」
と、ロンドン在住の大勢の方々がおっしゃるので、
疑心案儀で?見に行ってきました。



でも、ここのRenoirという映画館は
当時から気に入ってよくいっていました。
映画通に評判のミニシアター。
溝口特集などを毎年やってたり、
ウオン・カーウェイ、カウリスマキ、
フランス映画の粒ぞろいの新作などを
見た覚えが。
家のドアから走って5分の場所だったので、
思い立ったときにふらっと行けたのも
良かったです。(レンタルするより早い)


こないだ久々に前を通ったときは、
アルモドバルの新作で、ペネロペ・クルス主演の
Los Abrazos Rotos(Broken Embraces)
日本語だと「崩れた抱擁?」等が上映中でした。



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で、Brunswick Centre全体の話にもどると、
たしかにきれいに生まれ変わっていてビックリ。
前の様子を知らないと、ごく普通のショッピング街
にしかみえないけれど、
知ってると確かに「激変」でした。

でも、すぐ隣のMarchmont Streetは
昔のままで(ださくて)ある意味、嬉しかった。

よくいった安いChina Houseという中華も健在でした。
バルセロナでいうと、
海城飯店(ハイチェン)と同じレベルの店。

そういえば、
ちょうど香港が中国に返還された日に、
ここに食べにいったような。

香港から移住してまもなかった
オーナーのおばさんに、返還の感想をきいたところ、
「これからは中国のほうが、
ずっとイギリスより将来性がある。だから嬉しい!」
と、すごいヘタクソな英語で堂々と答えてくれました。

華僑の人たちと、私たちでは
基本的なたくましさがちがいます。


つきあたりが公園だった、
Handel St.のうちの前にもいってみました。


大学の寮みたいになっている(大学院生と職員中心)
ジョージアンの集合住宅でしたが、
窓から中をちらっとのぞいたら、
私たちの元フラットは、どうも先生らしき人が
住んでるかんじ(重厚な家具が置かれていたので)
上の階にセルビア人のおじいさんが住んでいたはずの部屋は、
安い学生向けのイケアの本棚などがみえて、
「ああ、おじいさん、亡くなったんだな・・・」
と思いました。
リバースモゲージみたいにして、自分のフラットを
亡くなったら大学のものにするという条件で、
お金をもらっていたはず。

12年前に80才だといってたけれど、
このレッシュさんというおじいさんは、
ものすごく個性的でいい人だった。

第二次世界大戦の最中、
ナチスの収容所から脱走して
ロンドンに来たそうで、
人生の大半をイギリスで過ごしているわけですが、
英語はそれでもかなり訛っていました。
(もちろん、それなりに流暢でしたが)

「イギリスにもいいたいことがたくさんあるけれど、
やっぱり、ドイツは、そんなわけでまだ苦手かもね〜」
とひょうひょうと話してくれました。


私たちが引っ越して間もないころ、
中庭でスペイン語で話していたら、
窓から遊びにくるように
呼びかけてくれたことなどもいい思い出。

なんでも、亡くなった奥さんがスペイン人で、
スペイン語の響きがなつかしかったそうです。


そのときは、ちょうど、
バルセロナ郊外で高校の社会科の先生をしている
Naspleの従姉妹のルルデスが、
修学旅行の引率でロンドンに滞在中で、
大勢の生徒を大学生のボランティアに預けて
フリーになったので、息抜きでうちに遊びにきていて、
中庭で話していたのでした。
というわけで、
彼女も一緒にレッシュさんのお宅に伺いました。

リビングに通されて、安楽椅子に
そのルルデスという従姉妹が座っていると、
いきなりレッシュさんが
「妻は10年前、
その椅子に座っているときに亡くなった!」
といったので、
私たちみんなひえ〜っ!とビックリ!

ルルデスが一番、困った顔をしていました。

ちょうど、ユーゴスラビアの戦争のころで

「セルビアばかりがCNNやBBCのニュースで悪者に
なっているけれど、実態は違う。
決して大手メディアにだまされてはいけない!」
とも。

現代の欧州でおこっているなんて、
信じられない悲惨な戦争でした。



というわけで、
若い頃からずっと大変だった
レッシュさんですが、
英国で知り合った奥さんと家族にめぐまれ、
最終的にたくさんのお孫さんがいたようです。

いちど、買物して帰ってくると
家の前に大きな消防車がとまっていたので
「え、火事?!」とあせったら、
レッシュさんのお孫さん(若い女性)が
消防隊員になったばかりで、
近所にきたついでに寄った・・・とのこと。

一度、おじいさんに
消防車を運転してるところを
みせたかったんだとか。

ダイナミックです。

他にも上の階には、中米から第二次世界大戦前に
ロンドンにきて活躍していた
ジャズ・ミュージシャンのおじいさんもいたり、
バーベキューの炭に石油をかけちゃう
お騒がせな近所のアメリカ人女性(博士課程在住)、
民族衣装じゃないのに、
365日、全く同じ服を着ているように
みえるパキスタン系の男性(30代後半)
など、ほんとにいろんな人がいました。


でも、このあたり、学生や研究者が多く、
もともと普通のファッションや流行とは
まったく関係のない、
独自の時間が流れているので、
久々にいっても
なんだか時間が停まっているみたいで・・・
不思議な気分でした。
by nas-asa | 2009-10-21 21:33 |

浅倉協子 & Jaume NASPLE:バルセロナと東京で編集、翻訳、取材、執筆中。好きなもの:建築・デザイン、映画、音楽、夜でも青いバルセロナの空、日本の喫茶店、居酒屋。今食べたいもの:バスクのピンチョス。


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